今年度は、3科型・4科型の入学試験となった2008年度からの13年間で4科型受験者数が過去最高となった。昨年度と同様、倍率も2.5倍を超え、その人気の高さが揺るぎないものであることを物語っている。
注目すべき点としては、理科の合格者平均点が社会の合格者平均点より3.9点も上回った点があげられる。このような現象は過去10年のうち1度しかなく、昨年度は社会の方が0.1点高いだけであった。3科型受験の不利を解消しようとした配慮がうかがえる。
出題は全ての科目において、単純な知識やテクニックの修得だけではなく、本質の理解をともなっていないと得点が難しい良問ばかりである。普段からしっかり試行、思考し物事の本質を捉える学習を積み重ねていただきたい。
大問数は昨年度と同じ4題のままであったが、問題用紙は1枚減り全3枚と変化した。算数の合格者平均点は昨年度より10点ほど高くなり、易化したと言えるが、思考や工夫を要する東大寺らしい問題が多く出題された。
図形問題は一見するとシンプルで解きやすく見えるが、今までの知識をどう応用させるかを考える非常にハイレベルな問題であった。
また、解答用紙が表裏両面1枚で大問2以降は広いスペースに考え方や式を残す必要があるので、日ごろの学習から問題文にある条件を丁寧に整理したノート作りを心がけて欲しい。
ある言葉を正しく用いて短文を作る問題が例年出題されているが、今年度は「途方」という言葉から「途方に暮れる」という慣用句を導き出し、それを用いて短文を作成する問題が出題された。漢字の問題は例年通り難しいものが多かった。
論理的文章の長さは1枚半ほど、文学的文章の長さは2枚半ほどであり、全体的な文章量は例年通りであった。記述問題は論理的文章で70字以内と90字以内、文学的文章で60字以内の出題があった。
記述問題は要点や心情をじっくり読み込まないと解けない難問が出題される。合格するためには、文章を深く理解する読解力と要点や心情をまとめる高い記述表現力が求められる。
50分という全国でも屈指の長い試験時間と、問題用紙9枚で50問という密度の濃い入試は、今年度も健在であった。長くこのスタイルを崩しておらず、過去問を解いていけば東大寺特有の出題形式に慣れることが可能である。
東大寺最大の特徴は、単なる知識を問う問題はほとんど出題せず、正誤を問う問題、データやグラフから分析・思考をさせる問題が非常に多いということである。
特に地理分野は、データを用いた問題を作成しやすいので、普段の学習から本質をとらえた理解が必要となる。歴史分野や公民分野においても同様で、語句だけではなく、背景や意味をしっかりと理解することを大切にしなければならない。
3科型 | 4科型 | |
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募集人数 | 176名 | |
志願者数 | 336名 | 618名 |
受験者数 | 321名 | 588名 |
合格者数 | 171名 | 190名 |
実質倍率 | 1.88倍 | 3.09倍 |
算 数 | 国 語 | 理 科 | 社 会 | ※計 | ||
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受験者平均点 | 3科型 | 62.6/100 | 56.6/100 | 69.2/100 | ― | 251.2/400 |
4科型 | 46.1/100 | 55.5/100 | 65.0/100 | 65.3/100 | 233.6/400 | |
全体 | 51.9/100 | 55.9/100 | 66.5/100 | 65.3/100 | 239.8/400 | |
合格者平均点 | 3科型 | 75.1/100 | 61.8/100 | 74.8/100 | ― | 282.2/400 |
4科型 | 64.4/100 | 62.8/100 | 72.5/100 | 69.7/100 | 272.6/400 | |
全体 | 69.5/100 | 62.3/100 | 73.6/100 | 69.7/100 | 277.2/400 | |
合格者最高点 | 3科型 | 100/100 | 84/100 | 91/100 | ― | 356/400 |
4科型 | 100/100 | 84/100 | 93/100 | 92/100 | 344/400 | |
合格者最低点 | 3科型 | 44/100 | 39/100 | 53/100 | ― | 250.7/400 |
4科型 | 23/100 | 37/100 | 52/100 | 40/100 | 250/400 |
3科の得点を3分の4倍して判定
募集人数 | 176名 |
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選抜方法 | 算・国・理(・社) |
出願期間 | 12/9~12/18 |
試験日程 | 1/20 |
合格発表 | 1/22(掲示・web) |
算 数 | 100点(60分) |
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国 語 | 100点(50分) |
理 科 | 100点(50分) |
社 会 | 100点(50分) |
合 計 | 400点(210分) |
高校卒業生:210名
東京大(現役) | 27(20) |
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京都大(現役) | 68(43) |
大阪大(現役) | 15 (9) |
神戸大(現役) | 14 (6) |
大阪市立大(現役) | 9 (5) |
大阪府立大(現役) | 12 (5) |
早稲田大(現役) | 20 (1) |
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慶應義塾大(現役) | 16 (1) |
関西学院大 | 4 |
関西大(現役) | 21 (3) |
同志社大(現役) | 79 (9) |
立命館大(現役) | 52 (8) |
年 度 | 3科型 | 4科型 | ||||||
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受験者 | 合格者 | 実質倍率 | 合格者最低点 | 受験者 | 合格者 | 実質倍率 | 合格者最低点 | |
2016 | 293 | 149 | 1.97 | 281.3/400(70.3%) | 541 | 198 | 2.73 | 281/400(70.3%) |
2017 | 360 | 151 | 2.38 | 254.7/400(63.7%) | 534 | 213 | 2.51 | 254.7/400(63.7%) |
2018 | 335 | 154 | 2.18 | 240.0/400(60.0%) | 576 | 219 | 2.63 | 239.0/400(59.8%) |
2019 | 308 | 153 | 2.01 | 253.3/400(63.3%) | 576 | 198 | 2.91 | 254/400(63.5%) |
2020 | 321 | 171 | 1.88 | 250.7/400(62.7%) | 588 | 190 | 3.09 | 250/400(62.5%) |
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